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Webライターの専門性について考えてみる。得意分野があると強い

大橋博之
「何でも書けます!」というWebライターが多い。でも専門分野、得意分野があると仕事が仕事を呼ぶこともある。ぜひとも専門分野、得意分野を持ってほしい。

気がついたらアートに詳しい人になっていたという例

僕の携帯に日本経済新聞社の記者から電話があったのは、2014年の9月頃だった。
執筆の依頼だった。
『経済方面はあまり詳しくないんだけど、まぁ、書けというなら』と思ったが、『もしかして人違い?』という疑問がふと、頭をよぎった。

過去にとある雑誌から『漫画を描いて欲しい』との依頼があったことがあって、それは漫画家の大橋裕之さんへの依頼の間違いだったという、悲しいことが実はあったのだ。
『大橋違いの経済評論家さんへの依頼か?』
しかし、今回は間違いではないとのこと。
しかし、よく聞くと経済関係ではなく文化面。SFの絵を10個取り上げてそれで記事を書いて欲しいとの依頼。
「ああ、それならぜんぜんOKです」ということで無事、2014年11月7日から11月25日まで10回に渡って「未来の風景SFアート十選」という連載記事が日本経済新聞社に掲載されたのだった。

僕の携帯に東京創元社の編集者のK浜氏から電話があったのは、2015年の2月頃だった。
執筆の依頼だった。
「今、みやざきアートセンターの人と飲んれるんらけど」
たしかにザワザワと周りがうるさい。それにこの編集者、ロレツが回ってない。
よく聞くと、「未来の風景SFアート十選」で僕が生賴範義というイラストレーターを取り上げていたのをみやざきアートセンターの人がたまたま目にしてくれていたという。
「あの、原稿を書いた人に原稿を依頼ひたいと言うのへ、ああ、その人なら知ってるよって話になひて。後でメールするらひいよ。よろひくね」
『酔った勢いの依頼か?』

だが後日、メールはちゃんと届いて、そこには生賴範義の展示会をみやざきアートセンターで開催する。その時に図録を制作する。その図録用に記事を書いて欲しい、ということが記されていた。
「ああ、それならぜんぜんOKです」ということで無事、2015年7月9日に図録『生賴範義展Ⅱ 記憶の回廊 1966-1984』が刊行。そこに「もし、生賴範義がいなかったらきっと日本のSFアートは薄っぺらいものになっていたのに違いない。」という記事が掲載されたのだった。

日本経済新聞社から依頼がある前に、僕はイラストレーターの画集を編集していたり、イラストレーターのことを本に書いたりしていた。それが日本経済新聞の連載につながり、みやざきアートセンターの図録につながったというわけ。
僕自身はまったく考えていなかったのだが、僕はイラストレーターに詳しいライターということになっていたのだった。

専門分野があるといろいろと得だ

実はこれってWebライターには大切なことではないか?
つまり、専門性ということ。

僕は自分では意識していなかったけれど、イラストレーターに強いライターだと思われていて、仕事が仕事を生んでくれたのだ。
実際、日本経済新聞の連載にしろ、みやざきアートセンターの図録にしろ、持っている資料と知識だけで記事は書けた。
専門分野があると仕事がくるし、一から調べなくとも手持ちの資料と知識があれば書けたりするのだ。

「何でも書けます」というWebライターは多い。
『何でも書ける』という自負はあるだろうし、大抵のものは書けたりする。
何でも受ける体制にしておいた方が仕事が沢山、くるような気もする。
それはわかる。
でも、仕事を出す方からすれば「何でも書ける」というライターには何を頼んでいいのかわからないものなのだ。

化粧品のレビューを依頼したいとき、何でも書けますライターと美容ライターがいたら、僕なら迷わず美容ライターに声をかける。
だから、「何でも書けます」という看板は今すぐ下ろそう。

もちろん、専門分野はひとつでなくてもよい。
僕自身でいえば、専門分野をSF・アート・カルチャー・Webメディアと幅広くしている。他にもやりたい分野があれば追加して行くつもり。
さらに別のペンネームも持っていて、それはそれで別の専門分野がある。

専門分野を何にしたらいいのかわからない、というWebライターは多い。
専門分野を探す方法はとても簡単だ。
「国語」「算数」「理科」「社会」「美術」「保健・体育」のどれが得意か?を考えてみればいい。

僕の場合は、「国語=SFとWebメディア」「社会=カルチャーとWebメディア」「美術=アート」というところ。
美容ライターは「保健=美容」で、スポーツライターなら「体育=スポーツ」といったところだろう。
「国語」「算数」「理科」「社会」「美術」「保健・体育」の中の何が好きかを考えて当てはめていけば、何か見つかるはずだ。

逆に嫌いなものを抜いてくいということも出来る。
僕の場合、「算数」「理科」「保健・体育」は苦手。で、残ったのは「国語」「社会」「美術」だったというわけ。

ポイントとしてはニッチな専門と一般受けする専門の両方を持つこと。
アートなら大橋と言われたりもするが、アートはそもそもそんなに需要はない。
それだけを専門にしていたら仕事はこない。
だから、一般受けするものを混ぜる。

専門にしていたら同じ資料を何度も使いまわしできるし、知識だけで書くことができる。自分のアンテナもそっち方面だけ向けていればいい。
専門性、得意分野を持つことはWebライターにすれば実はとてもラクチンなのだ。

大橋博之
フォークラス・メディア編集部【ライター・エディター・プランナー】『Webライター入門』(技術評論社)を監修。著書に『SF挿絵画家の時代』(本の雑誌社)、『心の流浪 挿絵画家・樺島勝一』(弦書房)などがある。 twitter@garamonmini
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